固有名詞としての information management

information management (IM) には、「単独又は複数の情報源からの情報収集及び管理並びに当該情報の単独又は複数の聴衆への配布」という固有名詞としての意味がありますが、日本語ではそれほど知られていないように思います。また、IM に関連して「情報の性質」についての興味深い考察(情報管理の3原則)がありましたので紹介します。
英語版の Wikipedia には、Information management - Wikipediaというページがあります。ここには、"information management (IM)" について、首記のような定義がされています。日本語版の Wikipedia には、この記事に対応する 情報管理 - Wikipedia の記載があります。この記事から、興味深い記載をいくつか引用します。

  • 情報管理は情報を組織し、検索し、取得し、保守する一連の作業を含む。
  • 適当な時間と労力で周囲のあらゆる情報を収集/評価し適切な判断をするのは不可能である
  • 確立された組織の規則と手続きは最も適切な決定をすることを妨げる。
  • 情報管理(すなわち組織の情報処理能力)は、組織および経営の中核的能力である。結果として、組織設計の戦略は情報処理能力の強化を目的にしなければならない。

また、情報管理とマトリクス組織とは関係がある概念であるとのことです。

「情報管理の実用的ガイド」が興味深い

Wikipedia の情報管理についての記事は難解ですが、そこからリンクされているhttp://www.managing-information.org.uk/summary.htmは明快で示唆に富んでいます。
この記事では、情報の要素として「relevance(妥当性)」「timeliness(適時性)」「accuracy(精度)」「completeness(完全性)」「simplicity(単純性)」を挙げ、まずは特に前者3つが重要だとして、さらに「relevance(妥当性)」と「timeliness(適時性)」が情報管理を決める重要な要素であるようにしているように読めます。また、情報は意志決定に用いるものであるという側面が強調されており、

  • 情報は、意志決定に使われてのみ妥当であり必要である。
  • 情報は、意志決定しなければならない時にのみ必要である。
  • 情報は、意志決定するに十分なだけの精度を持てばよい。

という価値判断を、情報管理の3原則としてとりまとめています。
このことを地理空間情報にあてはめた場合、大変興味深いことになります。通常、地理空間情報は「精度」によって序列が組まれます。また、「完全性」についても、地理空間情報の教科書的知識である程度カバーがされています。さらに、私は、このブログで「単純性」については注目してきたように思います。しかし、「妥当性」と「適時性」については、序論的な記載では言及されているかもしれませんが、情報管理の文脈ほどは注目されていないように思います。
情報管理の3原則をジオに適用することで、すなわち、意志決定の目線を価値判断に導入することで、地理空間情報の価値について新たな考察ができるような気がします。特に、ジオ全体からは、「測量屋の言う精度」が「嫌われて」しまう現象について、新たな考察が得られる気がします。
例えば、個別の意志決定について、ある地理空間情報が「意志決定に使うに妥当な情報を含まない」「意志決定に必要な時に手に入らない」「意志決定に必要な精度を超えている」ことで、必要な価値を生み出していない、という側面があるのではないでしょうか。情報管理の視点をジオに導入することで、こういったことが見えてくる可能性があります。