iOSのオープンさについて

Android vs iOS という文脈で「iOS はクローズドである」と語られることが多いですが、iOS も、Mac OS X と同様に、「オープンな側面もある」ということの確認です。
これは、議論の本筋を変えるものではないとは思います。「Android の Andy Rubin」によるオープンの定義(下記)を踏まえて言えば、例えば iOS は「チェックアウトして make できる」ものではありません。しかし、iOSオープンソース側面が小さくないことは、もう少し認識されて良いのではないかと思います。
<参考:「Android の Andy Rubin」による Open の定義>

iOS のオープン側面

「オープンかクローズか」はトリッキーな選択肢でもある - 横浜スローライフ -- My slow life in Yokohama を興味深く読ませて頂いています。iOS vs Android が Closed vs Open として捉えられることの意義に対する疑義が示され、Apple 側の反論にあるような Integrated vs Fragmented というとらえ方もあながち悪くないとの考え方が示されています。私も、同じように考えています。*1
ここでは、議論の補強として、iOS だってオープンソースである部分が大きいことについて、確認しました。情報源は、
Open Source - Releases
です。このサイトで、iOS 4.0 のところを見ると、JavaScriptCore, WebCore, cctools, gcc, gdb, gnumake, keymgr, ld64, libiconv, libstdcxx がプロジェクト登録されています。iOS の全部ではまったくないが、「難しそう」なコア部分のいくつかがプロジェクト登録されているような状況かと思います。
この状況は、Andy Rubin 流の定義のオープンには到底及びませんが、Appleオープンソースの効用を理解しており、オープンソースが効果的であるところ(特にインフラストラクチャのレベル)では、かなりオープンソースを利用しています。個人的には、かなり「賢い=クレバーな」利用方法だと思います。Appleオープンソースに敵対する者であるという描像は、この側面を無視した描像となります。
Apple の場合、限られたリソース*2で最大限のイノベーションを実現する(=最大限の競争力を得る)ために、OS やブラウザにおけるオープンソースの採用を進めた経緯があったと理解しています*3

iOS vs Android はスペイン内戦であるという比喩(では誰も幸せになれないかもしれないけど)

1年ほど前から、Apple vs Google は、1930 年代におけるドイツ vs ソビエトに比喩できてしまうのではないかと思っていました。Apple に感じる独裁性と先進性、Google に感じる閉鎖性と革命性から、このような比喩では誰も幸せになれないかもしれないと思いながら、この比喩が頭から離れません。
iOS vs Android の一つの比喩として、これはスペイン内戦にたとえられるのではないかと感じます。iOSフランコ軍、Android が人民戦線であるように見えます。この戦いが歴史になって後に、イデオロギーをもってその意義を解説することは可能ですが、戦いが行われている最中に、イデオロギーをもって両者の優劣をはたから論じることは、それほど意味がないようにも見えます。ただし、参戦しようとする方が、どちらの側で戦うかを考えるために両者のイデオロギーを参考にすることは、意味があるように思います。しかし、イデオロギーは、実質と必ずしも一致していない(つまり、iOS にも、オープンという側面もある。)ということに注意する必要があるように思います。

*1:ところで、Steve Jobs の「議論のすり替え」は、非常に上手で、すり替え先が実際に重要な論点であることが多い気がします。例えば、iTunes において DRM が行われていることに対する批判に対して、DRM 自体が悪であるのだと議論をすり替えて、Apple=悪という構図をDRM=悪とした上で、DRM を一部やめました。また、個人的には、「iOS App による検閲→Apple=悪」という批判に対して、「iOS App はネイティブだから curated である必要がある。HTML5 という Open なプラットフォームも同じくらい大事なものとして Apple は用意している。」という議論のすり替えを行っていることも、大変興味深いです。

*2:ただし、Apple のリソースが限られているとすれば、「世界のすべての組織のリソースは限られている」ことになります。確かに現在において、全ての組織はタスクに対してリソースが限られていると思います。このような現在において、リソースを競争力に効率よく転換するための努力は、本質的に重要だと思います。

*3:Mac OS XSafari は、酷い状態から急激に脱出する戦略としてオープンソースを採用した経緯があったと理解しています。