Produktübersicht Basis-DLM を読む 1

何を始めたのか

このページに,ドイツ連邦共和国における地形図データ ATKIS DLM (の基礎データである Basis-DLM データ)の整備状況が公開されています。これを読んでいきたいと思います。SVGJavaScript を扱うほど神経活力が残っていないときに調べて行きたいと思います。

第1回 カラム名を読む

Bundesland
連邦州。ドイツは16の連邦州からなります。地形図の基本データは連邦州の測量局で作成し,連邦の地図局は編集により小縮尺地図を作成します。
Letzte Aktualisierung
最終更新。この整備状況データの最終更新日を意味しているようです。
Erfassungsstand
捕捉状況。各段階でどの割合で現実を捕捉しているか,多分面積比で示していると思います。
Grundlage
根拠,典拠,出典,といった意味で,元データを指していると思います。
Genauigkeit
精度。ドイツ人は genau! とよく言います。「そのとおり」という意味ですが,日本人はそんなことあまり言わないので,こう翻訳した時点で違和感があります。標準的日本人と「精度」という言葉の間にはかなり距離があると思いますが,標準的ドイツ人と die Genauigkeit という言葉の間の距離はかなり近い気がします。日常語から精度という概念までの距離が近いです。
Aktualitat
辞書を引くと時局性という言葉がで出てきますが,地図データが現実のどの時間範囲をモデル化しているかを示す指標です。「時間範囲」と理解していて良いと思います。(2007-09-02: Aktualität を時間範囲と訳すのはあまり良くないと判断したため削除)
Fortführungsturnus ohne Spitzenaktual. (Jahre)
ドイツ語の造語力が炸裂している感じですが,「集中更新を除く修正周期(年)」という程度の意味だと思います。集中更新というのは,特別に大きい地形の変更があった場合(例えば,空港や高速道路の完成だとか供用開始など)に,通常の計画とは別に対象となる部分を修正することを指すと思います。2007-09-02 下記のため修正

「道路など重要な地物は,通常の更新周期よりも短い特別な更新周期を設定している。そのことを Spitzenaktualität と呼ぶ」

http://d.hatena.ne.jp/hfu/20070902/1188757701
Abgabeformat
情報形式。データフォーマット。日本の地図作成機関ではベンダ中立なフォーマットで提供するパターンが多いですが,ドイツではお客さんが受け取るデータのフォーマットを選ばせるパターンが多いようです。
Preis [pro km²]
価格(平方 km あたり)。ヨーロッパは地図作成機関に地図作成のコストを回収させる政策をとる方向にあります。そのため,地図データの価格には,地図作成のコスト回収分が含まれているはずです。一方,日本では,地図作成のコストは国が負担し,地図データのユーザには地図データ複製のコストのみを負担させるのが原則的な考え方になっています。この違いの結果,ドイツの地形図データは日本のものよりは高めの価格設定になっているはずです。次節で確認してみましょう。
価格について。日本の地形図データの平方km単位の価格概算

日本で ATKIS DLM に一応対応するデータである,「数値地図25000(空間データ基盤)」は,従来版は都支庁府県単位で,新しい JPGIS 準拠版は全国一括で7,500円で販売されています。上述の考え方の違いや,データ内容の違いが非常に大きいので,比較にはそれほど意味がありませんが,仮に日本のこのデータの平方kmあたりの価格を計算してみましょう。
Wikipedia の都道府県の面積一覧によると,面積最大の都支庁府県は岩手県,最小は香川県だそうです。7500円をそれぞれの面積で割ってみると,1ユーロ160円換算で,

全国データの平方km単価
2.0銭=0.01ユーロセント
岩手県データの平方km単価
0.49円=0.31ユーロセント
香川県データの平方km単価
4.0円=2.5ユーロセント

となります。おおむね,平方kmあたり高々3ユーロセント程度と思っておくと一応の比較にはなります。
本当は,この3ユーロセントはデータ代ではなくてメディア代というのが理屈のはずなので,日本ではデータそのものの代金は0と考えるという考え方もあり得ます。
いずれにしても,ドイツでは平方 km あたりセントオーダーではなくてユーロオーダーの価格を設定しているので,ドイツは高めの価格設定だということが確認できました。
次回から,州ごとの状況を見て行きたいと思います。